溝口敦の仕事
   

溝口敦の斬り込み時評 No.530(2026年6月8日)
何でも匿流の事件にしたがる警察はおかしい

 トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)が特殊詐欺を行う。SNS型投資詐欺やニセ警察詐欺などで、その被害総額は去年1414億円に上った。

 他方、強盗被害額は発表されている中で最新2022年の数字では99万6000円に過ぎず、窃盗5852万円、侵入窃盗1677万円を含めても、特殊詐欺に比べて被害額が圧倒的に少ないことが明らかである。

 つまり匿流にとって効率的な犯罪は特殊詐欺であって、強盗殺人ではない。しかも強盗殺人は最高刑が死刑、無期と重く、詐欺の最高懲役10年以下に比べれば、およそ強盗殺人が間尺に合わない犯罪であることは素人にも分かろう。

 しかし警察は栃木県上三川町の強盗殺人事件はトクリュウの犯罪と見なしている。実行犯、リクルータ役など高校生5人や現場指示者の竹前海斗・美結容疑者の他、新たに事件を主導したとして増田和彦容疑者を公開手配した。

 トクリュウの犯罪と見るのが妥当と思われるほどの犯人たちの陣立てである。だが、事件を子細に見ると、犯罪に失敗するのは当然、パクられるのは自業自得と呆れるほどのお粗末さである。

 トクリュウを系譜的に見るなら粗暴犯ではなく、知能犯の系譜に連なる犯罪者と見るべきだろう。上三川町の事件を見る限り的確に情況判断した上、正確に窃盗、あるいは強盗に着手したという形跡はみじんもない。事件を主導したとされる増田容疑者以下、メンバー全員が知的でなく、頭の回転が鈍いワルと見なすほかない。

 このメンバーの成したことのどこがトクリュウ的なのか。ろくに知らない同士が臨時にメンバーを組んだところ、首謀者の情報提供や計画による犯罪の準備、首謀者が中国経由でミャンマーだかに飛んだところ、などだろうか。

 この程度のことは街のあんちゃんにだってできる。ただし成功は絶対におぼつかない。。

 警察が最近匿流への取り組みに力を入れていることは評価できる。しかし、何でもかんでもトクリュウの犯行にしすぎるのではないか。トクリュウと名がつけば事件の価値は増し、世間の注目度は高まる。

 それは分かるのだが、味噌もクソも一緒にすべきではない。混乱のもとになるだけだ。

 トクリュウの怖いところははじめに見た特殊詐欺による国民の被害額の大きさである。金銭的な被害によって死に追い込まれる被害者はざらにいる。強盗殺人も世人の耳目を集めるほどに怖い犯罪だが、発生件数の多さ、被害額の巨大さ、首脳部の逮捕しづらさなどで、警察は特殊詐欺により注力すべきだろう。今もって警察は特殊詐欺にどう対処すべきか暗中模索を続けている。