溝口敦の仕事
   

溝口敦の斬り込み時評 No.529(2026年5月25日)
栃木県の強盗殺人は匿流まがい犯行だ

 5月14日に発生した栃木県上三川町の強盗殺人事件は、警察の見立てではトクリュウの犯罪とされるが、不可解な事項が多すぎよう。

 まず事件の準備、進行がずさんすぎる。指示役とされる無職・竹前海斗、妻の美結容疑者は実行役の高校生4人のうち1人と以前から接触があったという。そしてそのルートを使って残りの高校生3人を集めた。

 匿名・流動型犯罪グループが行う強盗事件では、首脳部はもちろん現場指示役も実行犯グループとは接触しない、身元も明かさないというのが鉄則である。実行犯が一番警察に逮捕される危険が多いのだから、逮捕された者の口から捜査を指示役に及ばせないためである。

 ところが犯罪実行の直前に竹前容疑者は実行グループと高速道のサービスエリアで落ち合い、グループに犯罪の目的が強盗だと明かした上、強盗道具であるバールなどを手渡したという。

 そして14日、午前9時23分ごろ目的の農業法人を営む資産家宅に実行犯を踏み込ませ、住人である富山英子さん(69)を殺害、富山さんの長男と次男にも頭部の骨折など重傷を与えた。

 グループが目的の家に留まった時間はわずか5分ほどというが、事前に30〜40代の息子2人がいること、朝の9時台という侵入時間など、通常ではあり得ない条件下での犯行をどのように実行グループに納得させたのか。

 こうした短時間でも実行犯グループは資産家宅から多少金銭などを奪ったようだが、それは高校生4人の動員に見合う金額だったのか。資産家なら家に置く金額は必要最低限に抑えているはずである。キャッシュカードを奪い、暗証番号を聞き出す時間はあったのかなど疑問点は幾つも出てくる。

 実行犯は5分後の逃亡でよほど慌てていたのか、グループ員2人を置き去りにしたまま逃走した。車に乗り遅れた2人はすぐに逮捕され、ほどなく6人全員の逮捕になった。

 警察は竹前海斗容疑者の上にほんとの指示者、事件企画者、頭領がいる。あるいはこの目的の家には他の実行犯グループを用意していたが、その下見役が逮捕されたため、急遽海斗グループに切り替えたなどと見ているようだ。

 この資産家宅は誰が見ても「この家は金持ちだ」と納得させる構えである。防犯カメラも備え、男盛りの家族も近くに住む。匿流リーダーは何らかの盲点を見つけて、強盗でカネを取るのは難事と判断するはずである。

 ことによると、夫婦そろって無職でカネに詰まっていた竹前夫婦が一かバチかで強行した無理筋犯罪だったのかもしれない。竹前夫婦は「金持ち名簿」で目標設定というより、偶然通り過ぎ、チラ見してこれと決めた疑いさえ出てくる。とすれば、トクリュウ犯罪ともいえない。悪ガキが行った「匿流まがい犯罪」となろう。