溝口敦の仕事
   

溝口敦の斬り込み時評 No.525(2026年3月23日)
複数の組の暴力団員が組む犯罪は決して珍しいことではない

 最近、東京・上野の4億2300万円入りスーツケースの強奪事件を例に取り、複数の組の暴力団組員が協同して一つのジョブをこなす現象をさも新しい犯罪タイプであるかのように報じるニュースや読み物記事を目にして、ちょっと違和感を感じた。

 やくざのシノギは本来が個人事業主的であり、組ぐるみで一つ事業を行うケースはむしろ例外的だろう。組員一人一人がそれぞれの才覚で別々のシノギを行う場合が多く、それが基本である。

 また複数の組員が同一のシノギで組んだとしても、自組同士でメンバーを組むより、自分とは別個の組に属する組員たちがタッグを組む方がむしろ多い。少年院や刑務所で意気投合し、兄弟分になった相手や、中学時代の友人で他組に行った友人とか、組が違う相手の方が構えず気楽にシノギができるようだ。

 上野の強奪事件で登場した組員の所属先は山口組、極東会、住吉会の3団体に及んでいる。

 昔から覚醒剤商売は「代紋や暖簾で行うシノギではない」とされ、その取引相手は全国の暴力団横断的である。たとえば、九州のA組が海外から覚醒剤を密輸したとして、その覚醒剤を小わけして他組に売る場合、同じA組系列の別団体に売るより、まるで別団体系のB組や関東のこれまた別団体系のC組、北海道の別系列のD組といった風に、取引相手が同一代紋か否かを問わない。

 もっとも覚醒剤の小売りの場合、その組の組員が家内工業的に手分けして計量や小袋への袋詰め、売人への配達や末端小売りなどの業務を、組員全体で取り組む場合がある。親分とすれば、これにより人手を動員でき、また組員に定期収入の場を提供できるなど、メリットがあるわけだ。

 組員がシノギで組む相手先暴力団はさすがに抗争中の相手団体ではちょっと二の足を踏むが、数年前の抗争経歴などはあまり気にしていない。

 組員たちは基本的に現実的で、所属組と相手組の過去からの関係などはあまり問題にしない。組長の悪評なども現役組長の場合はさすがに反応しがちだが、先代親分の悪口に反応して跳ね返るケースは少ない。

 こうした事件に見られる複数暴力団系列登場が語ることは犯罪類型の特殊タイプではなく、せいぜい親分ー子分関係、家父長的組織原則より今風の先輩ー後輩、同僚関係の方になじむ感性だろう。

 かしこまった関係から立ち居振る舞いやシノギの仕方などを学ぶより、友だち感覚で遊びながら身につける方が性に合うといった体質である。擬制血縁関係といった旧来型システムを持つやくざ世界でも半グレや匿流的な気分になじめる傾向が広がってきたといえるかもしれない。