溝口敦の斬り込み時評 No.538(26年10月19日)
特殊詐欺は今や、日本の「匿流」の専売特許ではない

 韓国の特殊詐欺(ボイスフィッシングや金融詐欺)被害額は去年2兆2,000ウォン(約2420億円)超で過去最悪という。一方日本の今年上半期の特殊詐欺被害額は約1816億円であり、日本の人口は韓国の約2.4倍だから、ほぼ韓国は日本と同じくらいの割合で特殊詐欺の被害を受けているとはいえそうである。

 特殊詐欺被害の多さは日本の特殊事情ではなく、韓国や中国、フィリピン、東南アジア諸国、欧米など、おそらく全地球的に蔓延している犯罪である可能性が高い。

 日本では暴力団退潮の後、新たに匿流(匿名・流動型犯罪グループ)という犯罪グループを新設し、特殊詐欺はもっぱら匿流が手掛ける犯罪といった色分けがされてきたように思う。

 しかし諸外国を見れば、特殊詐欺は従来から存在する犯罪グループが行っている犯罪のように見え、何も「匿流」といった新概念を創出してはいないようだ。

 新しいのは彼らの手法が電話や電子メール、SNSなど、オンラインで詐欺を仕掛け、金銭の詐取法も可能なら仮想通貨への切り替えなど、オンラインで行いたいと願っている点である。被害ターゲットとは可能な限り対面しないのが彼らの原則である。

 しかし、考えてみれば、どの国の犯罪グループだろうと、匿名・流動型が基本だろう。あえて顔や名をさらし、公にする犯罪グループはいない。

 日本では顔をさらし、組名の看板を掲げる、世界的に見れば極めて異例のやくざ、暴力団という集団がいたがために、あえて「匿流」という新設のグループ分けを行ったと見られる。

 結論的にいえば、特殊詐欺は国や地域を選ばない普遍的に発生している犯罪であり、各国ともその対策には苦労しているということである。

 現に韓国では今年「電気通信金融詐欺統合対応団」なるものを警察ばかりか金融当局まで巻き込んで創設し、犯罪グループの口座凍結や番号遮断などの方法で被害を減少傾向に持っていっているという。

 おそらくそこまで運ぶには前提として通信傍受が不可欠だろう。日本の警察がいう「匿流が使用しているスマホの通信内容を遠隔で入手する制度」とは端的にいえば、通信傍受、つまり盗聴を認めよということである。事実、通信傍受なしに特殊詐欺集団の中核部分を摘発することは不可能だろう。

 匿流というよりむしろ半グレと呼ばれた時代から特殊詐欺グループは使用する携帯への警察の盗聴を恐れて、効果があるのかないのか不明なものの、終業後、各人が使う携帯を回収し、電子レンジに保管していた。また盗聴に強い新型のスマホもすでに開発している。

 人で攻められないなら、使う道具で攻めるほかないといえよう。