溝口敦の斬り込み時評 No.527(2026年4月20日)
司、高山コンビによる「名門ヤクザ」コレクション

 去る3月27日、東京・台東区の山口組系落合金町連合本部で実質的に東声会を山口組の傘下に置く盃事が行なわれた。

 東声会は初代・町井久之が戦後創設した暴力団で、町井は右翼の児玉誉士夫の仲介で三代目山口組組長・田岡一雄と兄弟盃を交わした関係ではあった。

 だが、近年は退勢甚だしく、暴力団対策法による「指定暴力団」であることからもカットされ、組員は昨年段階でせいぜい10〜20人程度とされる。いわば死に体だった東声会を山口組の、特に弘道会が新たに活を入れるべく、今回の盃になったわけだ。

 つまり昨年10月、弘道会の若頭補佐だった小澤達夫を弘道会から離脱させ、東声会の舎弟に据えた。その上で今回、五代目東声会会長・早野泰から禅譲を受けた形で小澤が六代目会長に就いた。

 今後は山口組色をさらに強める東声会になるわけだが、山口組の思惑はどこにあるのか。東声会の乗っ取りとはいえまい。東声会はほぼ中身が空っぽの、名前だけの存在といっていい。そんなものを乗っ取ったところで、採算が取れるわけがない。

 思いつくのは山口組の司忍組長と、未だ隠然たる勢力を振るう前若頭(現相談役)高山清司の2人が暴力団世界の「名門」コレクターであることだ。暴力団世界に名門とは?と首をかしげる向きは多いだろうが、言ってみれば有名やくざ団体の存続を願い、それを傘下に抱えたがる習性のことである。

 24年にも山口組系淡海一家の高山誠賢総長を山口組から離し、わざわざ八代目会津小鉄会総長に据えている。これは高山誠賢が四代目総長だった高山登久太郎の実子だった縁もあるのだが、「歴史ある」会津小鉄会を手元近くに置きたいという欲求があってのことだろう。

 今、山口組の司——高山ラインは北九州の工藤會に接触を図っているが、これも野村悟総裁の引退後、警察の爆撃でどうにもこうにもならない工藤會をなんとか山口組傘下で存続させたいという思惑があるのかもしれない。

 また本来が井上邦雄の持ち物である山健組を六代目山口組に移籍させたのも、安東美樹により竹中組を復活させたのも、有名組織の名を傘下で収集、存続させたいという欲求の表れだろう。そういえば山口組の傘下には幕末の侠客、次郎長の清水一家さえある。

 そして有名組織の存続がやくざ世界の平和に資する行為になると司、高山は信じているのだろう。滅び行くものを押しとどめる行為が平和をもたらすのか。そうでなくても、やくざ世界は山口組を除いて、他団体との抗争が久しく絶えて平和ではないか。