|
溝口敦の斬り込み時評 No.526(2026年4月6日)
「暴重匿軽」から抜け出せない警察のトンチンカン

4月2日、警視庁は上野の路上で現金4億円以上が入ったスーツケースが奪われた事件にからみ、指定暴力団の住吉会、極東会の本部事務所、山口組系弘道会傘下組織の事務所を一斉に家宅捜索したという。
事件で逮捕された暴力団組員らが所属する団体の上部組織だからという理由だ。
警察はすでに暴力団は衰退、組織犯罪の主流ではなく、これから主流をなすのは匿流と見て捜査のウエイトを移したはずだが、今もって思い込みにすぎない「暴重匿軽」視の弊害から抜け出していないようだ。
おそらく今回、暴力団の事務所を捜索したところで何の成果も挙げられないだろう。なぜなら事件に関係した組員たちはパシリに近い実務従事者だからだ。香港での金買い付け資金とされる4億円超を用意できる暴力団が今どき存在するのかどうか、よく考えた方がいい。
事件の背後に潜む組織なりグループなりが暴力団である可能性は極度に低いと見るべきだろう。
金インゴットを消費税なしの海外で買い付け、日本に密輸して消費税を逃れた上、日本で金取引業者に売り、売り付け値から消費税分を儲けるというシノギはもともと半グレないし匿流、そして不良貴金属取引業者あたりが始めたことである。
彼らはこれまで何回も行った金インゴット取引で億や十億という単位の買い付け金をキャッシュで蓄えている。あるいは周囲にそれだけの資金を出資できるお仲間がいる。今さら暴力団の零細な資金などに頼る必要はないのだ。
事件に参加した暴力団の組員たちはもともとパシリという現場従事者だから、主催者に運び屋として便利に使われ、手にする報酬もたいした額ではない。報酬は彼らの生活費になるか、小遣いになる程度で、その金を組長に上納するなどはまずもって考えられない。
だから彼らの口は軽い。同じように金インゴットで便利使いされている仲間やポン友はいくらでもいるだろうから、彼らを通じて、あるいは自分自身で情報を他グループに流す。
それでこの事件に見るように情報が抜け、上野や香港で一連の強奪事件が連続発生したにちがいない。
警察はこの事件の影に主催者としての暴力団がいると見ているようだが、それは「暴重匿軽」だろう。今や暴力団にとって4億円超という金は大金であり、そんな大金を複数のパシリを使って香港に運ぶ企画を実行できる余裕や根性、度胸を暴力団は持ち合わせていないのだ。

|