溝口敦の斬り込み時評 No.409(2020年12月21日)
「後のことは知ったことじゃない」ヤクザの終焉

 新型コロナウイルスの蔓延で多くの人が時代に閉塞を感じている。今が息苦しく、先が開けない。暴力団業界になると、なおさらである。山口組系の50代の幹部が言う。

「私が若いころ、10代、20代の若者が平気でヤクザの門を叩いていた。ヤクザになりたい、入れて下さいと。そのころ30代、40代前半の男は『オッチャン』と思っていた。

 今はヤクザに鼻を引っ掛ける若者はいないし、今のヤクザでは30〜40代が『若手』です。70代は現状を変える気がなく、今のシステムが後5〜10年ぐらいもてばいいと思っている。その後のことは知ったことじゃない。そういう時代にめぐり合わせた者がそれぞれ苦労すればって考えている」

 わが亡き後に洪水よ来たれというわけか、権力を持つリーダー層は誰も5年後、10年後のことを考えていないという。

「つまり年齢の面でも人員の面でも、ヤクザはもう限界が来ている。終わりの終わり、今が終着点です。

 しかし、そうであってもヤクザの看板を外すのは恐い。看板を外すと、どうなるか分からない。他の仕事もできない。だけど、看板を外さずにいても、若手は入ってこない。組織は立ち腐れるだけです。

 中には半グレを上手に使っているつもりのヤクザもいる。だけど半グレは半グレで、逆にヤクザを都合よく使っているつもりでいる。半グレという若手もそう簡単にはヤクザの手の内に入らない。

 さすがに拳銃を使った犯罪になると、半グレもヤクザに一目置く。しかし、50〜60代のヤクザが最後のあがきとして拳銃を使うわけで、別に成算があってのことじゃない」

 六代目山口組の場合、敵側を殺傷した組員や元組員はたいてい警察に自首して逮捕される。神戸山口組の場合は警察の捜査で浮上して初めて逮捕となるケースが多いが、この差は六代目側が実行犯の組名と組員名が確定・公表されることで、その襲撃は完成するという立場を取るからだ。

 つまり襲撃する者は襲撃するだけでは足りず、逮捕、服役することで初めて組への功績が認められ、留守家族などへの厚遇が約束される。恐怖印の宣伝をして、組のシノギをやりやすくしてくれたからだ。

 銃撃に成算があるとするなら、体の自由を捨てて服役することが絶対の条件であり、そのかぎりの成算である。なかばやけくその苦界への投身であり、コロシアムでライオンと対戦させられる奴隷の剣闘士に似ている。

 もっとも組の資金が貧弱になると、ヒットマンも動かせなくなる。神戸や絆会はもちろん、六代目山口組にもその気はある。みかじめ料など基盤の部分でシノギも限界を迎えているからだ。