440)構造不況なのに甘やかされ、今も甘えている暴力団幹部たち(22年5月9日)


 警察庁の発表によれば、全国の暴力団勢力は2万4100人、前年より1800人の減で、17年連続の減少という。しかもこれは準構成員を含めた総数で、組に所属する構成員(組員)だけでは1万2300人にすぎない。

 明らかに暴力団は「構造不況業種」である。全国の銭湯数はわずか3450軒まで減ったが、銭湯と同じく取り巻く環境が厳しく、もう跳ね返す手がないということか。遠くない将来、暴力団の消滅が予想される。

 しかし暴力団、ヤクザは銭湯やタバコ屋、パチンコホールなどと同様の、単なる一業種ではない。暴力団のトップが自負するように、実の親も手に余す、箸にも棒にもかからない若者に一通り行儀を教え、世間に通用する身ごなしやシノギ、飯の食い方を仕込んで、はみ出し者を世に送り出す施設でもある。

 当然、これには反論があるだろう。ヤクザの親分は偉そうにしているが、単にアマチュアのワルを拾い上げてプロの犯罪者に仕立て上げているだけ。彼らを悪事に走らせて彼らから上納金を絞り上げているだけだ、と。

 その通りだが、日本は長いことヤクザを半分だけ容認する政策や社会倫理を続けてきた国である。ヤクザは反社ではなく、実質的に「半社会的」存在だった歴史がある。その証拠に暴力団、ヤクザは今も組事務所を構えることを許されている。組を結成・維持しても、それは結社の自由であり、なんら法に触れることではない。

 暴力団対策法で個々の暴力団を指定したからといって「解散せよ」とはいわれない。単にこれこれの経済行為はやめよ、違反すれば中止命令を出すよ、それでもなお続ければ罰金、あるいは1年、2年の刑はあるよ、というにすぎない。

 諸外国の組織犯罪集団対策ではほとんど「指定」は解散を意味する。集団を結成してはいけないし、それへの加入を呼び掛けても、メンバーになっても、犯罪と見なされる。

 日本の暴力団対策は明らかに甘い。おそらく警察が暴力団を絶滅させたくなかったからだろう。江戸期にはヤクザの親分に十手を預けて犯罪捜査と逮捕の手助けをさせた。今でも警察は、蛇の道はヘビという考えから抜け出せていない。犯罪者情報は組員から聞き出すのが早くて間違いが少ない。

 警察のこうした曖昧な姿勢をアテにしているのだろう、暴力団首脳は構造不況のただ中にいるくせに驚くほど危機意識が薄い。自動車部品加工メーカーの社長は電気自動車の普及で部品の数が3分の1に減る、大変だというのでとっくに車メーカーを訪ねて必死に商談を重ねている。

 だが、そんなことは馬耳東風、親分たちは相変わらず神戸山口組をぶっ潰して山口組の再統合だ、と息巻く。ほとんど病気である。これほど世事にうとくてアホでも親分は続けられる。