438)厚労省と半グレ 危険ドラッグのいたちごっこ(22年4月4日)

先月17日から電子タバコなどに装着して吸引する大麻リキッドHHC(ヘキサヒドロカンナビノール)が厚労省により禁止された。危険ドラッグの一つと見なされたからだ。
危険ドラッグは約8年前、池袋で「ハートショック」を飲用した30代の男が車を運転して舗道に乗り上げ、通行人8人を次々はね飛ばし、うち1人を殺し、7人に重軽傷を負わせた事件あたりから、半グレたちのシノギであることを止めていた。
半グレたちの多くはその後、金インゴットの密輸入などで食いつないできたが、それも税関の取締り強化や税の加重などで、今はほぼ命脈を絶たれた。
今回、極めて短期のブームで終わったHHCだが、危険ドラッグをかつて手掛けていた半グレたちにとっては久しぶりに訪れた干天の慈雨だった。1本のカセットが0・5万〜2万円ぐらいで飛ぶように売れ、それまでの借金を返せたと語る者もいる。
かつて危険ドラッグの原料に使われた化学物質は中国青島などの化学薬品メーカーから輸入したものだが、HHCはアメリカから持ち込んだ正規品が多かった。なにしろアメリカでは一部の州で大麻の購入や使用が認められているから、大麻が由来のカンナビノイド系成分も大目に見られている。
半グレ系の業者はHHC製品をアメリカで買い付け、日本に輸入、販売するわけで、自らドラッグをデザイン、製造、販売したわけではない。
かつては自分が危険ドラッグをデザインし、中国の化学薬品メーカーに原料物質の製造を依頼していた半グレが言う。
「たしかにHHCは久しぶりの商材だったけど、私の場合、トントンでしたね。が、このHHCも厚労省の今回の法指定で禁止になり、これからは逮捕される覚悟なしには売れない。
実はHHC後の売り物はもう決まっている。HHCoというやはりカンナビノイド系の薬物で、まだ日本では危険ドラッグとは見なされていない。押っつけ危険指定されるだろうけど、それまでの間は逮捕される危険なしに売ることができる。
が、これはアメリカで、電子タバコのように低温燃焼で気化させると、含有成分が使用者の肺で固まり、死亡事故が出たらしい。だからこれは自分が小売りせず、輸入と卸に徹するつもりだ。いい歳して刑務所に入りたくない。
だけど来年春、日本で大麻取締法が改正され、合法化されるんじゃないかという話が出ている。そうなればカンナビノイド系薬物に対する禁止も緩まる。我々の間では大麻解禁論が半ば信じられている」
どちらにしろ当分の間、半グレと厚労省の間で危険ドラッグをめぐる追いかけっこが再開する。薬物を出せば厚労省が潰す、業者は類似品を出し、また厚労省が潰すという連続劇である。

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