425)工藤會トップへの極刑判決の裏に警察の潰されたメンツ(21年9月6日)


 工藤會(北九州市)の野村悟総裁、田上不美夫会長に対し、福岡地裁は求刑通りそれぞれ死刑、無期懲役を言い渡した。

 全国の暴力団はひとしく警察の包囲下にあるが、多くの暴力団が警察に降伏し、首を差し出す中で、工藤會の不服従と抵抗は「先進的」といいたくなるほど突出していた。

 2010年前後、「ぽりすニュース」という主宰者不明のサイトが存在したが、これも工藤會が主宰していた。警察庁以下全国47都道府県警の不祥事ニュースばかりを、各地方紙などの記事を転載する形で掲載し、警察をおちょくる。アーカイブを備え、地域別、月別に過去のニュースも参照できた。

 福岡県公安委員会12年、工藤會を暴対法上の「特定危険指定暴力団」に指定したが、その際、工藤會は意見聴取の会場で次のように数字を示して反論した。

<警察庁が毎年発表している「暴力団情勢」によると、08年指定暴力団の組員に出た(暴対法違反の)中止命令は2018件である。この年の指定暴力団組員数は計3万8880人だから、組員1人当たり約0・0519件の中止命令が出された勘定になる。工藤會の組員数はこの年770人とされているから、約40件中止命令が出されて当然だったが、実際に出された件数は12件だった。

 同様に09年は期待値(平均値)37件のところ実際には13件、10年は期待値34件だが16件、11年は期待値34件だが10件、12年上半期は期待値17件だがわずか2件に過ぎなかった。つまり工藤會の暴力的要求行為は平均値より低い。にもかかわらず「暴力的要求行為等が多数敢行されていることなどから、工藤會の構成員等が更に反復して暴力行為を行うおそれがある」とする公安委の主張は破綻している>

 暴力団は公安委に呼び出されても「意見聴取」の場に出ず、公安委(警察)が指定するまま、結果を受け入れてきた。だが、工藤會だけは理にかなった反論を試み、警察に煮え湯を飲ませてきた。

 工藤會は北九州を一党支配的に牛耳り、組員の犯罪が摘発されることはないと自信を深めていた。それで県警を揶揄する右の陳述になったのだろうが、福岡県警は工藤會の賢しらだての言い分を効果的に反駁できず、余計、工藤會憎しに凝り固まったはずだ。

 そうしたことが積もり積もって8月24日の死刑判決になった。福岡地裁の判決はたしかに確たる証拠がなく、検事が情況から推認を重ねた論告を下敷きに、裁判官がお墨付きを与えた文章である。

 裁かれる者が暴力団の首領だから物証なし、情況証拠だけの極刑判決が許されるのか。これが一般国民に及べば、暗黒社会化は間違いないように思える。