424)オレオレ詐欺はダメだけど特殊詐欺はよいという暴力団の倫理観(21年8月23日)


 前回、暴力団のアングラ化について記したが、では、暴力団の看板で商売しないはずの秘密組員たちは、どういうシノギで飯を食っていくのか。

 その組に、まだ警察がフロントとして把握していない企業があるなら、とりあえずそこに社員として、放り込む手がある。フロント企業を持たない組はどうするのか。

 当人あるいは先輩組員が企業や組織を持っているなら、そこを活用する。業種は一般に「正業」と見なされやすい建築下請け、不動産、運送、解体、産廃運搬・処理、マチ金、風俗、飲食、ゲーム店などが多いようだが、新しい秘密組員たちはそこに在籍してシノギを学び、組織を伸ばしていく。

 こうした業種は「暴力団の資金源になる」という理由で警察の取締りを食うことが少ない。しかし、今回、話を聞いた組長によれば、逆に危険が多そうな覚醒剤の密売なども秘密組員たちにやらせそうだ。

「シャブの密売はたしかにヤクザのシノギの代表で、そんなものをポット出の秘密組員がこなせるかと思うだろうけど、大丈夫。先輩の組員さえつけておけば簡単に商売をおぼえる。だいたい昔から「代紋でやる商売じゃない」といわれているぐらいで、客さえつけばヤクザでなくたってできる」(組長)

 しかし覚醒剤の密売には依存症の蔓延に手を貸す極悪イメージがある。警察にも徹底的に目をつけられやすい。新規の秘密組員たちは耐えられるのか。

 組長が言う。

「気の持ちようです。我々はシャブ中を蔓延させているわけじゃない。シャブをほしがっているお客さんに、我々が危険をおかしてお届けする。ここにあるのは需要と供給の関係だけ。法律で供給には重い罰則が科されている。それを覚悟の上で、我々はシノギにしている」

 暴力団の中にも、絶対、うちは覚醒剤や薬物に触らない、社会を敵に回すから、と厳禁する組は珍しくない。

 また暴力団のアングラ化には凶悪化とは逆に、社会から容認されたいという思いがありそうだが、そこが覚醒剤や大麻に手を出しては、社会の容認と逆行しそうだ。覚醒剤の密売は現在、もっとも稼ぎやすいシノギだが、同じ事情が特殊詐欺にもある。

「高齢者いじめのオレオレ詐欺は組員はもちろん秘密組員にも禁じてます。しかし、それ以外の特殊詐欺、たとえば還付金や架空料金請求、融資保証金、女性紹介などの特殊詐欺は禁じてません。

 あれもダメ、これもダメでは若い者が食っていけない。だいたい詐欺に引っ掛かるのは被害者に物欲があるからで、詐欺はゲームの結果ともいえる。被害者にも責任はある」

 一般人とヤクザとの間には善悪の判断に微妙なズレがある。