423)本物のヤクザと半グレの間の秘密組員が増えている(21年8月2日)


 先日、ある暴力団の組長から話を聞く機会があった。そのとき組長が何気なく洩らした一言がこうである。

<うちのような組にもたまに20代、30代の若い人が入りたいと言って来る。会って話を聞いて、よさそうだと思ったら、「入るのはいい。だけど組には登録しないよ」と言います。

 組員になれば車やスマホ、住まいなどを分割で買えなくなるし、きちんとしたシノギも持てない。何をやるにも不自由な暮らしになり、若い者が可哀相だ。だから絶対、組には登録をしない。>

 つまり警察も承知の公然たる組員にはしない。徐々に静かに秘密組員ばかりにしていく。

<直参(本部に所属する組員)は登録せざるを得ない。ただし、それ以外の者は登録せず、地下にもぐらせる。

 警察が直参を捕まえて「お前んとこ若い者は何人いるんだ」と聞いたら、「俺は1人親方だ。子分はいない」と答えさせる。今は見栄張って子分の数を誇る時代じゃない。>

 新加入の秘密組員に対しては、そのときその者が持っているシノギ、職業、勤め先、住まいなどは極力持ち続けるよう指導するという。

<組員とバレたが最後、警察は全部暴力団の資金源になるから有害だと、正業だって潰しにかかる。だから自分からシノギを手放すようなことは絶対させない>
 組が組員と認めていないなら、警察はその者を組員と認定することはできない。組員でないのなら法の扱いは一般人と同じになり、ローンも組め、銀行口座も新設できる。生活保護だって受給しやすくなるだろう。

 しかし暴力団の秘密組員化は一般人にとって、今まで以上に不気味に映る。ことによると、会社の同僚やお隣に隠れ組員がいるかもしれないのだ。

 先の組長が続ける。

<いや、公然の組員だろうと秘密組員だろうと、実態は変わらない。具体的にはヤクザと半グレの中間ぐらいに、新しく秘密組員ができると思ってくれればいい。

 秘密組員に対しては半グレ以上に我々がコントロールを利かせるから、一般人はかえって安心できるんじゃないか。少なくともオレオレ詐欺みたいに、爺さん、婆さんを地獄の底に突き落とすような真似はさせません。>

 秘密組員化が進むと、警察や社会が把握する暴力団は単に本家、本部のメンバーだけとなり、その下に列なる二次団体以下はすべて海面下に没する。つまり氷山のように土台が沈んで見えない秘密ヤクザ化が進む。

 暴力団のさらなる悪質化、凶悪化を招きかねない危険な方向だが、暴力団にとって、秘密化は警察や暴排条例、暴排条項に対する最後っ屁のような防禦策と見られる。