411)親分子分という擬制血縁関係=ビジネスモデルの崩壊(2021年1月25日)


 日本の暴力団を特徴づけるものに擬制血縁関係がある。実際の親がいるにも関わらず、組員となる者はこれと見込んだ男を親分として選び取る。子分は親の言うことは黒いものを白いと言われても、親に従わなければならないとされる。

 親になった者の第一の責務は、実の親も手に余すゴチャ者を世間に通用する人間に仕立て上げ、その者が自分の才覚で飯を食えるよう育てることだろう。

 暴力団組織は企業とは違い、親分が子分に給料を払うのではなく、子分が自分の力量や才覚で食えるようになれば、逆に親分や組事務所に月会費や上納金を納める。つまり親分は子分の数が多ければ多いほど懐がうるおう仕組みである。それもあって組は広域化する。

 しかしこうした擬制血縁関係は、現代では限りなくブラック企業に近い。社員に給料を払わなければブラック企業といわれても仕方ない。だが、暴力団は給料を払わないどころか、社員からカネを取る。

 その根拠は「お前が飯を食えるのは、うちの代紋(いわば組のバッジ)のおかげだ。つまり代紋が稼いだようなものだから、カネを親分に運べ」となろう。

 しかし、自分の食い扶持を稼ぐぐらいは組に入らないカタギでもできる。

 組員は「無法」を事とする暴力団に入ることで、自分に向けられる暴力を受容したに等しい。親分、兄貴分からひどい暴力を受けても、警察に被害届けを出すことは絶対できない。

 組員は代紋から利益を受けるばかりではない。代紋のおかげで微罪で逮捕収監されたり、鉄砲玉として走らされたり、あるいは組員だという理由で住居を賃借できず、新規口座を開けなかったりする。

 こういう擬制血縁関係の下に長く留まる理由はない。考えれば親分が子分に提供できる物は何もないのだ。高額な収入も、人が羨むような住宅も、街の住人が思わず頭を下げるような権威や名誉も与えられない。

 下層の組員に与えられるのは貧乏暮らしと女房や家族の不和、借金だらけの知人関係ぐらいだろう。妻子はとおの昔に逃げ、孤独でヨレヨレの老後が待っているだけ。末は衣食住が保証される刑務所にでも入り、獄死すれば葬式代も要らないと考え出す始末だ。

 結局、擬制血縁関係に基づく親分--子分関係はすでに通用しないビジネスモデルなのだ。これを捉えて、子分が親分に盃を返すのは逆盃だ、許せない、などとクサすのは時代錯誤も甚だしい。

 山口組の分裂抗争も根っこにあるのはこの擬制血縁関係の矛盾である。それにカネがからんで、親分だけの大儲けは許せない、こうなったら俺たちは組を割って外に出たというのが実態であり、どこが勝った、負けたの話ではない。