402)ヤクザも移籍したら働かないと昇進できない(20年8月31日)


 ふつう暴力団は組を移籍すると、移籍した組の席次で最末端に位置づけられる。席次を上げ、幹部に上がるためには、組でそれなりの働きを見せなければならない。

 移籍した時期が抗争の最中ならば、何よりその者の配下からヒットマンを出し、敵幹部のタマを取るなど、目覚ましい戦績を挙げなければならない。平時ならばシノギで大儲けし、会費以外の巨額をトップに上納し、お覚えをめでたくしてもらうなどだ。

 やっていることと、やっている最中の心理はサラリーマンと同じようなものだろう。ヤクザとはいえ、単なる「遊び人」では組内で昇進できない。

 今、分裂抗争の渦中にある山口組では、旧山健組組員のヒットマンとしての起用が目立つ。

 今月15日に山口県岩国市で発生した銃撃事件では六代目山口組系竹中組傘下篠原会組員の上田貴裕(33)が神戸山口組系木村会幹部・前原順一(52、喜竜会会長)を銃撃、左腕や右太ももなどに被弾させ、重傷を与えた。実行犯・上田は竹中組系の組員となっているが、元を質せば山健組の出身である。

 つまり旧山健組の組員が六代目山口組側に拾われ、なんのことはない元の主筋に当たる神戸山口組系の幹部を襲撃している。

 去年11月27日に尼崎市で発生した神戸山口組・古川恵一幹部(59)射殺事件も同じである。六代目山口組系竹中組の元組員・朝比奈久徳(52)は自動小銃で古川幹部を連射、ハチの巣状態にして殺した。この朝比奈は竹中組の元組員とはなっているが、それ以前の前身は山健組の組員だった。

 山健組は古くからイケイケとか武闘派とかの評判が高かった。神戸山口組が分裂、結成されたとき、井上邦雄組長は「荒事は全部山健組が処理するから」と他の幹部たちを説得したとされる。

 口ほどにもなく、山健組の六代目山口組側への攻撃は振るわないように見えるが、実は山健組の組員は六代目山口組側に移籍してから、武闘派の真価を発揮、神戸山口組側を攻撃している。

 皮肉なものである。個々の組員は尻に火がつかないと、真剣に攻撃に取り組まないのか。もちろん組内で昇進したい当人が直接、攻撃要員になることはない。返り討ちに遭ったり、逮捕され、長期服役を余儀なくされたりの危険で、昇進どころの騒ぎではなくなる。

 やはり下の者に因果を含め、留守家族の面倒見を約束し、この人のためならと下の者を走らせなければならない。

 六代目山口組側とすれば、山健組という最強の敵をボロボロ崩した上、取り込んだ山健組の組員が果敢に神戸山口組攻撃に突っ込む。将棋と同じで、取り込んだ駒が自分の戦力になってくれるのだ。