401)山口組分裂抗争の結末 今は広域暴力団の時代ではない(20年8月17日)


 山口組分裂抗争の決着を山一抗争と同じように考える人たちがいる。つまり山口組(六代目山口組)の圧勝を確実視している。

 たしかに六代目山口組が現在、圧倒的に優位に立っていることは間違いない。敵対する神戸山口組は中核的戦力の山健組が二分裂し、池田組が脱退、絆会と同盟関係を結ぶなど、すでに解体過程にあるように見える。

 しかし構成員数で見ると、山一抗争時代とは様子が違うことに気がつく。

 まず1984年、一和会が四代目山口組に叛旗を翻し、一和会を結成した時点での勢力比は山口組5千人(直系組長47人)、一和会6千人(直系組長34人)だった。このわずか半年後、山口組は構成員1万400人(直系85人)と急回復し、ほぼ分裂前の組員数に戻した。

 今回の分裂では2015年の分裂直前、六代目山口組は構成員1万300人を数えた。このうち神戸山口組の分裂で組員2000人が割かれた。

 だが、直近(19年末)の数字を見ると、六代目山口組8千900人、神戸山口組3千人、絆会610人である。六代目山口組は分裂から5年たった今なお分裂前の組員数を回復できず、分裂した2団体も数の増減はあるが、そのまま存続している。

 このことは何を意味しているのか。まず指摘できることは、旧組員たちが六代目山口組に戻らなくてもやっていけると考え始めたことだ。もはや全国に名が通った広域暴力団の時代ではないという疑いが生まれている。

 オリンピックや大阪万博、カジノ開設など大規模イベントが軒並み崩れ、コロナで覆い尽くされる今、小さくともより地域に密着した組織の方が過ごし易いのではないか。

 早い話、九州には四社会がある。道仁会、工藤會、太州会、熊本会の4団体が独立を保ちつつ共存している。山口組に比べればいずれも小さいが、地域を確保している。

 中国、四国には五社会がある。共政会、侠道会、浅野組、合田一家、親和会がそれぞれ地域を守りつつ、緩やかに交流している。

 こうした小型の地方組織のあり方がむしろ時代に適っているのではないか。たとえば親子の盃をするにしろ、親子とも相手の顔や人柄が分かった上で交わす。後で「話が違う。盃は返す」という失態は少なくなる。

 もっといえば、数段階に及ぶピラミッド型組織の中で親子盃に一生縛られるナンセンスを免れることができる。

 つまり今は山一抗争時代とは取締法も取締り体勢も、暴力団のあり方もガラッと変わった。簡単に「山口組の勝ち〜っ!」と軍配は上げられないのだ。