390)覚醒剤流通網を叩き潰さない警察の不思議(20年3月2日)


 財務省の発表によると、去年不正薬物の押収量は3・3トン、うち覚醒剤は2・5トンに達したという。覚醒剤2・5トンはふつうの乱用者の使用量で計算すると8566万回分、末端価格になおせば1542億円に相当するらしい。

 しかも、これだけの量が摘発され、その分が市場から除かれながら、日本の密売価格はまるで動いていないと、取締り当局者は言う。いかに厖大な覚醒剤が密売市場に出回っているか、慄然とするばかりである。

 日本の場合、覚醒剤の国内流通は暴力団が独占的に仕切っている。たとえ素人や外国人が日本国内に覚醒剤を持ち込んでも、大量になればなるほど、国内での荷捌きは暴力団の流通ルートに載せざるを得ない。つまり全国を相手取る流通は暴力団の専権事項なのだ。

 とすれば、暴力団を締め上げるためには、覚醒剤の流通ルートを潰せばいいと誰にでも分かる。最近、警察は暴力団いじめで、月5万円程度のみかじめ料の徴収さえ摘発している。支払った側の店名さえ公表しているから、いずれあらゆる事業者がみかじめ料を払わなくなるだろう。

 暴力団が経済的に詰まるのは結構なのだが、みかじめ料の支払いには、客によるグズリをヤクザが抑えるといった警護役的な意味合いもある。早く言えば用心棒代であり、全面的に店側、事業者側が被害を受ける犯罪ではない。

 現在、薬物犯罪はどの警察本部でも組織犯罪対策部の中の薬物銃器対策課が扱っているようだが、少し前までは生活安全部で扱っていた。すなわちパチンコやデリヘルなどの風俗、銃器などと同じく「生安」の担当だったから、取り締まる面と併せ、業界育成の一面を持っていた。

 早い話、警察署長は2、3度署を異動すると、地元業者からの餞別で家が建つといわれる時期が長く続いた。餞別の出し手は主に風俗業者、中でもパチンコ業者だった。

 つまり取締りと行政指導を兼ねる部署は「さじ加減一つ」ということで、業者との癒着をうみやすい。それが警察に不規則な資金を貯えさせたのだ。警察と覚醒剤の関係を見ていると、「生安」の伝統がまだ生きているのか、とさえ思わせる。

 現に東京の近県では地元署の近くにもっぱら覚醒剤で大きく稼ぐ暴力団が事務所を構えている。警察によるガサ入れの前には、知り合いの警官が「おい、×日に行くからよ」と事務所に声をかけ、捜索日を教える。

 この警察署は歴代署長の申し送りでもあるのか、ホンネはシャブ暴力団を挙げたくないと理解するしかない。本気で警察が暴力団を壊滅したいなら、まず覚醒剤の流通をぶち壊すことだ。それが乱用者や依存症患者を減らす近道になる。