389)家族のためにカチコミをやるヒットマンの哀れ(20年2月10日)


 2月2日、桑名市長島町の六代目山口組・髙山清司若頭の自宅に元暴力団組員・谷口勇二(76)が拳銃弾3〜4発を撃ち込み、現行犯逮捕された。

 事件そのものはいわゆるカチコミであり、影響力ある事件にはなりようがないが、いずれ神戸山口組が関与しているはずとおおかたの者は見ている。

 谷口の元所属関係は正式発表されたものではないが、事情に詳しい者によれば、旧中野会の直参だったという。中野会は五代目山口組時代の若頭補佐・中野太郎が率いた組で、宅見勝若頭射殺事件で名高い。

 谷口は中野太郎が山口組の執行部から絶縁されても中野会を離れず、性根が据わった組員と評された時期もあったようだが、その後内部的に処分されたり、復帰したり、複雑なヤクザ人生を歩んでいるらしい。

 神戸山口組の井上邦雄組長は山健組の中堅だったころ、中野太郎に指導を受けたこともあり、中野会解散後もそこそこ旧組員へのパイプを持っていると見られる。

 神戸山口組は六代目山口組からの攻撃で直近だけでも3人の死者を出している。せめて「返し」の振りでもしなければ、士気は下がる一方である。ところがカチコミであっても現在は5〜6年以上の懲役刑だから、組員は簡単には動かない。そこでお金を支払い、旧中野会の谷口動員となったのだろう。後がない年寄りの起用である。

 事情は六代目山口組でも似たようなもの。去年10月、山健組の事務所横で山健組の組員2人を射殺した弘道会系組員・丸山俊夫(68)は事件後、「自分は老い先も短い。せめて娘にカネを残したかった」と供述したという。

 弘道会は組のために服役した組員本人やその留守家族への面倒見のよさで知られている。噂では丸山の家族に5000万円、丸山本人のために7〜8人の弁護団を組織したという。

 また同年11月、尼崎で神戸山口組・古川恵一幹部を自動小銃で射殺した六代目山口組系竹中組の元組員・朝比奈久徳(52)は覚醒剤で竹中組を破門になっていたが、保釈金をポンと支払い、高価なM16を簡単に入手していた。京都でさらに別の神戸山口組幹部を射殺するつもりだったと供述しているから、よほど潤沢な資金と報奨を約束されていたのだろう。一説に朝比奈は竹中組の後、弘道会系N組の世話になっていたという。

 要するに組員や元組員を動かしているのは組への忠誠心ではなく、カネである。高齢者が長期の服役をすれば、獄死が約束されたのも同然だから、せめて家族にいい目を見させたい。自分のではなく、家族の老後補償のために己が肉弾を敵にぶつける。まことにヒットマン哀れである。