381)暴力団がヒットマンを出頭させない理由(19年9月9日)


 先月21日、神戸の弘道会施設前で弘道会系組員が銃撃され、重傷を負った事件では、その後弘道会から報復がなく、山健組からの追撃もなく、単にそのまま放置されている。

 半ば予想されたことだが、この事件からはある程度、現代やくざが何を考えているか、窺えることがありそうだ。

 実行犯は今なお確定せず、逮捕されていないが、ほとんどの関係者が山健組の犯行と見ている。ほとんど間違いのない推測だろう。

 山健組は2年前、傘下の組員・菱川龍己が任侠山口組・織田絆誠組長の警護役、楠本勇浩組員を射殺した事件でも、菱川組員を警察に自首させていない。人によっては「菱川は死人に口なしで、事件直後に射殺され、遺体は人目につかないよう処理された。事件は迷宮入りだ」とさえ断言する。

 情報の真偽は確かめようもないが、少なくとも山健組は、自組が関係する事件で警察の捜査に協力するつもりはないといえよう。おそらく今回の弘道会系組員襲撃事件でも、実行犯の組員を自首させるつもりはないと見られる。

 では、その組員をどうするのか。考えられる手としては、①殺害、死体を隠して事件の迷宮入りを狙う、②徹底的に逃亡させて、警察に事件解明の端緒を与えない、③やはり逃亡させ、実行犯の組員を温存、ヒットマンの適任者として再起用する——の3つが考えられる。

 さて、10年ほど前、私は西日本のある組長に取材を申し込んだことがある。組長からは何月何日、弘前に花見旅行する。あんたも途中で加わらないか。私に質問があるなら、その場で答える、という返事をもらった。

 私は弘前に飛び、女性も含む組長の一行に合流したが、そのとき組長から「これがうちの殺し専門要員だ」と紹介された組員がいた。見たところ普通の40代で、遊興気分の一行の中では、口の利き方や身ごなしが控え目だった。

 組長が説明した。

「襲撃に一回成功した者は二回目も成功する確率が高い。尾行、道具、襲撃チャンスの発見、実行。何をやらせても経験があるから落ち着き、抜け目なく殺れる。こういうベテランを自首させるのはもったいない。

 やくざは殺しを1回やっても懲役25年か無期刑。2回、3回やっても刑は同じだ。だったら何度でもやってもらう。抗争がないときには身近に置いて、自由に好きなことをやってもらう。小遣いも惜しまない。それが当人にとっても幸せなはずだ」

 すなわちヒットマンの使い回し、複数回使いだ。こうした傾向は暴力団のマフィア化の典型だろうが、山健組にも同じような傾向があるように思える。