376)特殊詐欺を善行と考える若者たち(19年6月17日)


 今月初旬、久しぶりに新宿・歌舞伎町の飲食店に寄ったが、そのとき隣り合うグループの話が聞こえ、耳をそばだてることになった。

 隣は20〜30代6人のグループで、リーダー格は30代。話の様子からどうも特殊詐欺の班を仕切っているらしい。若い班員か、班員候補かに活を入れるため飲み会に誘ったような感じだった。リーダーは別に声をひそめることなく、若い者をこうアジっていた。

「いいか、今の年寄りはカネに汚いんだ。若い者のカネをかっさらって、クルーズ船で世界一周したり、女を囲ったり、いいように俺たちのカネを使いまくっている。それに比べ俺たち若い者が食ってるのはカップラーメンじゃないか。

 だから、俺たちは年寄りからカネを騙し取り、奪い取る。もともとは俺たちのカネなんだから、奴らから騙し取るのは当然のことだし、恥ずかしいことじゃない。胸を張って、奴らを騙していいんだ」
 若い者たちはリーダーの話にうなづき、その通りですなどと言っている。私は隣でこっそり聞いていて、「えーっ、何のこと言ってるの」と感じた。

 日本の年金は「仕送り方式」というのか、現役世代が払う保険料が高齢者への年金の原資になっている。その意味では若い者が出したカネをもらっていることになるが、とはいえ、年寄り世代も現役時代、さんざん保険料を払ってきた。自分で積み立てたカネを、今、受け取っているという感覚がある。

 数年前、特殊詐欺をやっている人間を正面から取材したとき、「詐欺は高齢者のところに滞留し、死蔵された財を回収し、社会に環流する最善の方法。日本経済に有効だ」と、冗談ともつかぬ話を聞いたことがある。

 まともに受け取らなかったが、今はさらに進んで、特殊詐欺の実行者たちはあたかも善行のように特殊詐欺を考えているらしい。彼らの全部が全部ではないだろうが、自分たちは義賊ロビンフッドとでも考えているのだろうか。

 とすれば、特殊詐欺は世代間戦争の現場ということになる。ゆえなく財を奪われた若い者が電話で高齢者を丸め込み、受け子を派遣して、高額の「返還金」を高齢者にそれと気づかせぬまま、騙し取る。

 おそらく若年層の貧しく厳しい雇用環境が世代間戦争をさらに激化させているのだろうが、高齢者は高齢者で、年金だけでは足りず、別に2千万円を用意しなければ、安心して死期も迎えられない。日本はあっちもこっちも行き詰まっている。