375)特殊詐欺の半グレを組員にしない抜け穴(19年6月3日)


 オレオレ詐欺などを含む特殊詐欺と暴力団との境界が暴力団側、詐欺側、取締り側の全面で曖昧になってきた。

 大阪府警捜査2課などは5月30日までに高齢女性からキャッシュカードを騙し取り、現金を盗んだとして大阪市住吉区の会社員、村上由高容疑者(36)を逮捕し、事件の関係先として姫路市の6代目山口組傘下、2代目竹中組本部事務所を家宅捜索した。

 府警によれば、村上容疑者は2代目竹中組の関係者で、組事務所に出入りし、2代目竹中組にカネが流れていたと見ている。が、「関係者」という発表だから、警察はまだ村上容疑者が竹中組に在籍する組員かどうか、把握していないと見られる。

 事実、暴力団には、このところ新人を組員登録しない傾向がある。組員としての登録は新人にとって法的な不利益ばかりだし、組にとっても警察の的を大きくするだけだから、最初から組員とは別の扱いをする。たとえば半グレとして組とは別のところで特殊詐欺グループを結成・運営させ、収益金の一部を組に上納させるなどだ。

 この場合、暴力団は詐欺グループを傘下に加えたわけであり、警察が仮にこうした関係を解明できるなら、詐欺グループがしでかしたことを根拠に、暴力団に捜索をかけて当然だろう。

 しかし、特殊詐欺はもともと半グレ集団が始めたことである。彼らは詐欺を行うに当たって最初から「暴力団の威力」などは利用しない。架電した相手にはとことん虚偽の関係先と信じ込ませて、詐欺を完遂する。被害者を恐喝するなら話は別だが、詐欺の要諦は徹底的に己の身分を隠し、偽ることである。

 詐欺はもともと男を売り出してナンボのヤクザとは文化を異にする。但し詐欺グループが被害者のもとに派遣し、現金を収受させる受け子については、被害者の前に全身をさらすから、姿の隠しようがない。よって詐欺グループは見ず知らずのネットカフェ住民などを「いい小遣い稼ぎがある」などと一本釣りし受け子に起用する。もちろん関係は一回限り、受け子が逮捕されたところで知らんぷりだ。

 だが、水戸地裁では、住吉会系の組員が周辺者の男に受け子を探させたからという理由で、暴力団の組長に使用者責任があるとして、被害者に組長などを提訴させ、勝訴させた。

 これとは逆に東京地裁では、単に住吉会系の組員が受け子を手配しただけでは、組長の使用者責任は問えないと判決した。

 一般の常識に照らせば、東京地裁の判決の方が適切だろう。受け子探しに組員が関わったとしても、架け子班を含む詐欺グループが暴力団の収益組織と見ることはできない。使い捨て要員の受け子を捕まえただけで組長の使用者責任は問えない。