374)米国の華為潰し、日本も同じ目に遭っている(19年5月20日)


 米商務省が15日、中国の華為技術(ファーウエイ)に対する輸出規制を発表した。これにより同社への高性能部品の供給は止まり、日本もいずれアメリカに右へ倣えして、部品輸出をストップ、ついに世界最大の通信機器ベンダーである華為はアメリカのために轟沈されようとしている。

 規模は比較にならないが、これで思い出すのは1984年、坂村健・東大教授が理想的なコンピュータアーキテクチャを構築しようと提唱、始まった日本のトロン(TRON)計画である。トロンにはNECや日立、富士通、パナソニックなど日本の大手電機メーカーの他、海外企業10数社も参加した。

 未来の社会では日常生活のあらゆる面にコンピュータが入り込み、人間と関わりを持つと、発足当初から予測、それらのコンピュータをバラバラに扱うのではなく、うまく連携するシステム(超機能分散システム)にしようと合意されていた。

 そのためトロンにはIトロン(組み込みシステム用のOS。デジカメやカーナビ、人工衛星などで使用)、Bトロン(パソコンやワークステーション用OS)、Cトロン(通信制御や情報処理用OS。NTTの交換機などで使用)など6つのサブプロジェクトを進め、成果を揚げた。

 たとえばすでにIoT(物のインターネット)が実現、多くの機器に組み込み用OSが実装されているが、その実体はトロンの中のIトロンであり、今や世界で6割以上の製品に組み込まれて事実上、世界標準である。

 IEEEの略称で知られる米国電気電子学会は電気・通信分野で世界最大の標準規格策定団体だが、去年8月、坂村健氏はIEEEの要請を受けて、Iトロンの最新版である「マイクロTカーネル2・0」の著作権を無償で譲渡した。つまりIトロンが名実ともに世界標準になった。

 パソコン用のBトロンも小学校の教育用パソコンへの導入が決まりかけたが、1989年、アメリカはスーパー301条の対象になると圧力を掛け、パナソニックによるBトロン実装製品を強引に圧殺した。

 米国の圧力でBトロンばかりか、NECや富士通の独自OSパソコンもウインドウズ95に席捲され、日本独自のパソコンは消失した。その後日本のIT業界がアメリカの後塵を拝し、今や世界が米GAFAに牛耳られたが、その始まりはトロン圧殺にあったかもしれない。

 アメリカはIT分野で中国に遅れを取るわけにいかない。それこそ西は東に勝つという強迫的な黄禍思想さえ根っこに蟠っているかもしれない。華為は単なる通商トラブルではなく、今後の100年を決する東西文明の激突でもあり得る。

 日本は戦前、「大東亜共栄圏」を呼号しながら、今やアメリカのポチとして華為叩きに加わろうとしている。