370)「アポ電強盗」は「オレオレ詐欺」の兼業なのか(19年3月11日)


 江東区東陽や渋谷区笹塚、初台などで発生した「アポ電強盗」が話題になっている。「オレ、オレ」と息子の振りをし、自宅に保管する現金の額を確かめてから強盗に押し入る手口らしいが、これはオレオレ詐欺との兼業ではないか、という見立てさえ出ている。

 だが、この見立てが成り立つためにはいくつかの条件がある。一つはオレオレ詐欺の「かけ子」が電話で親などを騙した後、家に出向いて現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」役を調達できなかった時。もう一つはよほど資金繰りに窮して、一刻も早く現金を手にしたかった時。

 オレオレ詐欺の実行犯が右記2つの事情に迫られていれば兼業説も成り立つだろうが、彼らを取り巻く環境がそれほど切迫しているとは思えない。

 オレオレ詐欺は騙しに電話を使うことで、完全に被害者から姿を隠せる犯罪である。IP電話を使うことで、被害者側電話のナンバーディスプレイにさえ、思い通りに偽の電話番号を表示できる。被害者宅に出向いて現金を受け取る「受け子」もバイトやそこらのフーテンを間に合わせで使うことで、自分たちが逮捕される危険を回避できる。

 この意味でオレオレ詐欺は完全に「姿なき犯罪」であり、加害者側にとっては、これ以上ないほど安全な犯罪なのだ。

 なぜ詐欺を発意・実行した「かけ子」部隊がこうしたオレオレ詐欺の有利さを投げ捨て、被害者宅に押し入り、家人を殺傷したり、家捜ししたり、第三者に目撃されたりする危険を犯す必要があるのか。ないと断言できる。

 早くも江東区東陽の「アポ電強盗」3人組は姓名が特定され、身柄を確保し次第、逮捕される運びだという。真の加害者が現場に立ち入ることは絶対のタブーなのだ。

 とすれば、オレオレ詐欺とアポ電強盗とは別物とみなければならない。息子を装って家で管理する現金額を聞き出すのはたしかにオレオレ詐欺の手法だが、その後の出方がまるで違う。

 アポ電強盗はこれまで半グレが守ってきた「経済的被害だけを与える」「暴力的被害は与えない」という不文律を破り、一部が暴力化しつつあることの先駆けかもしれない。

 大阪の半グレ集団「アビス」はガールズバーを開いたのはともかく、店に連れ込んだ客に殴る蹴るの暴行を加え、合計で億というカネを強奪した。詐欺と暴力的な恐喝や強盗殺人とは真反対の犯罪なのだ。

 暴力化はまた一部の半グレが暴力団の影響下に入った、あるいは暴力団の傘下に入ったことの徴表でもあり得る。