351)覚醒剤1グラムで致死量に至るのか(18年6月11日)


 覚醒剤の使用者で口から飲み込んで摂取する者はいない。効き目が遠くなり、不経済だからだ。たいていは静脈注射か鼻でスニッフイングする。あるいは歯茎や性器の粘膜にすり込み、皮膚吸収で摂取する。

 紀州のドン・ファン、野崎幸助氏(享年77)の胃からは覚醒剤が検出されたという。テレビを見ていると、専門家は口腔摂取でも、致死量は1グラムだと言う。本当かと思う。というのは、静脈注射でもいちどきに1グラムを摂取して、平然としている者がまれにいるからだ。厚労省の麻薬Gメンから直接聞いた話であり、ウソではなかろう。

 1グラムを飲ませることで相手が死ぬなら、覚醒剤は押しも押されもしない毒薬である。1グラムなら食べ物や飲み物に混ぜることで、相手に気づかせずに一服盛ることが可能だろう。

 関西方面では仲卸から数グラム程度の覚醒剤を仕入れ、小分けして使用者に直接小売りする末端売人を「コシャ」という。コシャはゴマンといるから、1グラム程度の覚醒剤を調達できる者など、無数だ。使用者の中にも1度に数グラムの覚醒剤を「おとな買い」する者など珍しくない。とすれば、野崎氏が殺されるチャンスは数多くあった。

 野崎氏は齢77歳にして、性的にはまだ現役だったらしい。私などには信じられないことである。根っからセックスが好きだったのか、テストステロンなどを恒常的に射っていたのか、ED薬を常用して性欲維持に使っていたのか。どちらにしろ端倪すべからざる性への執念である。

 だが、ドン・ファンというには最期が哀れすぎる。札束で面を張ることでしか、女性に相手にされなかった。当人も、相手が美人でスタイルがよくセックスの相手さえしてくれれば、好きも嫌いもなかったようだ。

 年甲斐もなく思春期の性欲を維持したというより、ガキのような性欲レベルでおおよそ70年間足踏みしたといえる。若く美人でモデル体型の女性を抱くことで、自分の「成功」と充足感を噛みしめていたのだろうか。

 が、カネ好きの女性の全部が全部ではないが、一部に嫌われていた。野崎氏のようなジジイに身体を触られるだけで怖じ気を振るう女性でも、カネのために、いっときは死んだ気になって耐えたはずだ。

 女性に好かれてこそドン・ファンといえる。性交した女性の多さを数えてドン・ファンと称するのは想像力の貧しさであり、それが殺しに至る病になった。