337)「野球くじ」と「カジノ」にみる公的機関の偽善(18年2月26日)


 日本野球機構は早ければ来年からプロ野球を対象とした「野球くじ」の導入を検討するという。

 実施される場合はサッカーの「BIG」と同じように、コンピュータが無作為に勝敗を選ぶ「非予想方式」になる見込みとか。つまり自分では巨人—阪神戦は何点差でどっちが勝つなどとは選べない。

 それどころか、くじを買った後でさえ、対象となった試合を明かさない。ふつう1週間に36試合ある。そのうちの一部を対象とするが、どの試合が対象となっているかはtotoの結果が出るまで伏せられる。くじを買った後でも、選手を脅迫して勝ち負けを強要できるから、それを予防するためという。

 多くの野球ファンがこんなわけの分からないくじは買えるかと思うだろう。野球ファンにはそれぞれひいきのチームがある。そのチームの試合だから熱くなれるのであって、それ以外の試合は付随的な興味の対象でしかない。すべからく暴力団が手掛けてきた野球賭博的に、あるいはイギリスのブックメーカー的に、対戦はどことどこ、勝ち負けはこれ、と単純明快であるべきだろう。

 が、日本で賭け屋はノミ行為として許されないから、苦肉の策としてサッカーJリーグなどのスポーツ振興くじに目をつけた。16年度の売上げは1100億円余りとか。

 パチンコ、パチスロは21兆円の売上げである。わずかパチンコの200分の1にすぎない規模だが、それでも日本野球機構は野球ファンやtotoファンからわずかでもカネを集めたい。

 折しも日本では解禁するカジノについて入場料が2000円とか、バカげた論議をしている。ギャンブル的な制度やインフラを広げた上、ギャンブル依存症対策もないだろうと思う。

 加えて今回は野球くじである。不可解な仕掛けにした上、まだ暴力団のノミ行為を助長すると、元コミッショナーなどは心配している。ほぼ断言していいが、暴力団は野球くじのノミなどしないし、またできもしない。彼らは賭ける時点で、その場で賭け金を徴収する仕組みやネットを持たないから、totoのノミ行為などできるわけがない。

 戦後、暴力団が開発してきた野球賭博は現金即時受け渡しのシステムを持たないため、完全に終結した。代わりにシノギを受け継ぐのは野球機構やtotoである。暴力団のかつての隙間産業が今や公的機関の落ち穂拾い事業として復活する。暴力団と同様、彼らの狙いも庶民の零細な遊び金である。