326)刑務所暮らしの高齢者が減らない理由(17年11月20日)


 法務省は17日、17年版「犯罪白書」を公表した。昨年1年間に刑務所に入った受刑者は2万467人で戦後最少となった一方、65歳以上の高齢者の人数は2498人で97年の約4・2倍、この20年間で最多となり、高齢受刑者の約7割が入所2度目以上としている。

 こうした数字にぼんやり浮かび上がるのが高齢暴力団組員や元組員の苦境である。誰にしろ刑務所には入りたくないが、刑務所ではとりあえず無料で衣・食・住が提供される。それがどん底にまで落ちた者の最終的なセーフティーネットになっていることを忘れるべきではない。

 考えてもみてほしい。組員が刑期をつとめて刑務所を出たとする。この男は組員かもしれないし、出所時には組を抜けているかもしれない。

 しかし組を抜けていても「元組員」として扱われる。組抜け後5年間は現役組員と同じ扱いを受け、新規に銀行口座などを開設できない。

 組員が服役前、家庭を持ち、ある種の稼ぎ先を持っていたとしても、服役で妻子が逃げ出し、家庭は崩壊しているかもしれない。稼ぎ先も潰れているか、出所後、カネの提供を拒否するかもしれない。それまでに持っていた銀行口座も銀行側の都合でおそらく解約されていよう。

 元組員は仕方なく何かの仕事を見つけ、事業所に潜り込もうとする。が、給与の自動振り込みを受けようにも口座がないから、受けられない。つまり収入先が見つからず、収入のメドが立たない。

 住まいも同じである。元組員は出所後5年間、現役組員と同じ扱いになるから、民間アパートさえ借りるのが難しい。

 生活保護の受給を申請しようにも元組員という立場や、居住先も定まらないようではほとんど拒否される。かくてこの元組員は刑務所を出たことで衣・食・住のすべてを失う。

 ではどうするか。再び暴力団に舞い戻るか、犯罪に手を染め、逮捕、起訴、有罪判決を受けて刑務所に舞い戻るか、どちらかしかない。

 だから高齢者の再犯は増えても、減ることはない。彼らにとって刑務所以外に避難すべき場所がないのだ。

 高齢者の再犯や刑務所への再入所にはやむを得ない事情を持つ者がいることを知るべきだろう。改善するには組員や元組員が働き場所を得られるよう手当するしかない。住むところ、寝るところの確保も欠かせない。

 同時に組を脱退した者に対して、以後5年間も組員と同様、差別的に扱うことを止めなければならない。人は5年間も霞を食って生きていくわけにはいかない。