319)「死人に口なし」ヒットマンは消されたのか(17年9月25日)


 12日、任侠山口組の警護役・楠本勇浩組員が山健組系一勢会・菱川龍己容疑者に射殺された事件で、兵庫県警は16日、菱川容疑者を殺人容疑で指名手配し、顔写真を公開した。

 だが、殺害現場となった神戸市長田区5番町付近では、兵庫県警が殺害実行者や補助要員を逮捕できるのか、早くも危ぶむ声が出ている。

 神戸の暴力団事情に詳しい地元の団体職員が言う。

「証拠隠滅に何が一番かといえば、死人に口なしです。容疑の実行犯を殺せば懸案事項はすべて解決する。現場に居合わせた者の口封じさえできれば、いくら組織犯罪処罰法で山健組のトップを『組織的殺人』容疑でパクろうにも、まるで関係なくなる。トップは完全に逃げ切れるんです」

 菱川容疑者ばかりか、現場の防犯カメラにばっちり画像が写った、自動小銃を持ち、うろついていた緑色の服の男。この2人はすでに沈められたのではないかと疑われている。

 というのも、井上邦雄組長が率いる現在の山健組には、口封じ殺人の前科があるからだ。

 07年5月、神戸市中央区の路上で山健組の多三郎一家・後藤一男総長が刃物で胸などを刺され、殺された。兵庫県警は3年後、組織犯罪処罰法違反容疑(組織的殺人)で山健組の若頭で健國会会長の山本國春を逮捕し、最終的に山本には懲役20年の刑が確定した。

 多三郎一家・後藤総長は山健組にとっては敵地といっていい名古屋で勢威を張る仲間だった。だが後藤総長は人前で平気で弘道会批判を口にするなど、山口組執行部で井上邦雄組長の立場を悪くしかねなかったため、10数人の山健組組員を動員して後藤総長を殺した。

 しかもこの事件の5カ月後には上野・御徒町で多三郎一家の元相談役が多三郎一家の後継組織の幹部らに射殺される事件が発生、その他、名古屋でも多三郎一家関係者の銃による遺体が車内で発見されるなど、変死事件が相次いだ。

 山健組は開放的なイメージとはちがって、過去、いくつか陰惨な事件を重ねている。首脳部の安泰のため、平気で仲間をぶつけて仲間を殺し、口封じする。

 任侠山口組襲撃は乾坤一擲、大勝負に出たわけだが、計画に失敗した以上は、襲撃の命令系統など、自派のヒットマンを消してでも秘匿しなければならない。

 仲間のために働いたつもりのヒットマンが哀れ仲間のために殺される。だとすれば、まことにヒットマン無情である。