304)金密輸がらみ事件が多発している背景(17年5月29日)


 福岡市で昨年7月、「密輸品であることは分かってるんだぞ」と、警察官を装って金塊約160キロを奪った容疑で、福岡、愛知両県警が5月22日、愛知県内の土木関連会社役員など7人を逮捕し、3人を指名手配した。

 計10人はおおよそ40歳前後、表向きは土木会社などに関係しているようだが、暴力団に籍を置かず、半グレの類と見ていい。奪った金塊のうちすでに4億円分は都内の貴金属店に売ったというから、案外、太いシノギをやる。

 愛知の半グレがなぜ福岡に出張り、他グループの金塊を奪うのか。一見理解しがたいが、愛知の空港でも金塊は密輸され、15年7月からの1年間で摘発された金塊の総量が93キロ、時価4億円以上に上るという。

 おそらく自ら金密輸を手掛けた経験もあり、事情と情報に通じているから、他グループの換金情報を掴み、福岡で横取りを実行したのだろう。福岡では金密輸がらみで事件が多発している。

 税関の統計によれば、金塊の仕出地は香港3割、韓国2割とされる。が、韓国では金の輸入に付加価値税10%、関税3%がかかり、日本に密輸して8%の消費税還付を受けたところで、割に合わない。ただ輸出時には税の還付があるが、日本に密輸入しようとする者がそのような悠長な手続きは踏めない。

 金密輸の大手に聞くと、仕掛けはこうだ。

 まず買付役が香港に飛び、金塊を仕入れる。香港では売買とも非課税、持ち出し自由である。買付役は入手後日本に帰るわけだが、その際、韓国経由のトランジットを利用する(従って通関しない)。

 他方、日本持込役は韓国で、「金属の塊を日本に持っていけば小遣いになる」とアルバイトを募集し、空港の待合所で買付役と合流、金を小分けしてバイトたちに隠し持たせる。

 その上で日本に入国させる。税関も韓国からの金密輸は予想外だから、密輸の成功率が高まるというのだ。ふつう日本人の帰国審査は簡単だが、外国人の入国審査では列ができる。外国人審査は厳しいが、1キロのインゴットは簡単に服やズボンのポケットに納まる。1人で5、6キロは軽いから、ほとんど露見せず、通関できるらしい。

 要するに半グレたちは犯罪の遂行で全国の要所に出没しているばかりか、東アジアをも股にかける。彼らの国際化は官憲の予想以上に進んでいそうだ。