溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

385)「カタギになりたかった」神戸山口組幹部が路上で蜂の巣にされた真相(19年12月2日)

 11月27日夕方、尼崎の神田南通の路上で神戸山口組・古川恵一幹部(59)が六代目山口組系2代目竹中組元組員・朝比奈久徳(52)に自動小銃で連射され、即死同然に殺された。

 古川幹部は初代古川組・古川雅章組長の長男で、いわばエエとこボンボンのヤクザだった。15年暮れ、彼に会ったことがあるが、ちょっと頼りなく、ヤクザには珍しい善人性を感じた。

 彼を古くから知る知人が言う。

「神戸山口組の井上邦雄組長に何度も「カタギになりたい。組を辞めさせてほしい」と願い出ていたが、「もう少し居てくれ。あんたに今辞められると、格好がつかない」と引退を認められなかった。引退できていたら、殺されずに済んでいたろう。

 だけど、当人は早くもカタギになったつもりで尼崎を気ままに動いていた。若い衆も全部いなくなり、いつも単独だった。息子に焼き鳥屋をやらせ、自分も店を手伝い、店内で肉を焼いていた。あげく3度も襲われ、最後には殺されてしまった。ヤクザながら、かわいそうな人です」

 他方、攻撃した朝比奈は古川幹部と知り合いだったらしく、わざわざ焼き鳥屋の外に呼び出し、「身体に30発は撃ち込んだはず」とうそぶくなど、冷酷無残である。古川幹部は少なくとも神戸山口組の直参である上、最高に襲いやすく、さぞかしおいしいターゲットだったはずだ。

 2代目竹中組・安東美樹組長は4代目山口組・竹中正久組長の実弟、岡山竹中組・竹中武組長に秘書的に仕えていたが、一和会・山本広会長宅襲撃事件を主導して熊本刑務所で長期服役した。出所後、山口組直系柴田会などを経て2代目竹中組を名乗り、現在では六代目山口組の若頭補佐に列なるなど、順調に出世している。

 筆者は山本広宅襲撃事件の前から安東組長を知り、出所後も顔を合わせたことがあるが、性格はヤクザとしての面白味には欠け、地方の役人のように堅実である。安東組長は長らく六代目山口組の主流派、高山若頭や同じ若頭補佐の弘道会・竹内照明会長などのそば近くで有用性を証し、現在の地位に上ったのだろう。

 だが、高山若頭が何より尊重するのは組のために体を張ることである。能吏であることも大切だが、抗争に当たってはなにより武勲を挙げなければ重んじられない。

 それで去年12月、2代目竹中組は朝比奈を偽装破門した上、潜行させ、今回の古川幹部襲撃になったのだろう。もちろん破門は襲撃の指揮命令系統を警察に突き上げ捜査させないための煙幕である。

 六代目山口組で弘道会以外の組が敵の直参のタマ(生命)を取るのは初めてのことであり、高山若頭の安東組長に対するお覚えのめでたさはさらに増すものと見られる。



<斬り込み時評バックナンバー>

384)高山若頭が人事で動き回り、山口組3派は荒れ模様(19年11月18日)
383)髙山若頭が出てきても山口組再統一はほぼ不可能(19年10月28日)
382)政界は山口組の再統一を望んでいるのか(19年10月7日)
381)暴力団がヒットマンを出頭させない理由(19年9月9日)
380)五輪まで堅気を泣かせる山口組3派の睨み合い(19年8月26日)
379)権力にへつらうお笑いなど見たくもない(19年8月5日)
378)スクープ写真を金で買うのは悪なのか(19年7月22日)
377)反社にも暴力団同様の判断をした吉本の新対応(19年7月1日)
376)特殊詐欺を善行と考える若者たち(19年6月17日)
375)特殊詐欺の半グレを組員にしない抜け穴(19年6月3日)
374)米国の華為潰し、日本も同じ目に遭っている(19年5月20日)
373)任侠山口組で織田代表と親子盃、舎弟盃(19年4月22日)
372)忖度させた安倍首相も麻生大臣も同罪だ(19年4月8日)
371)アポ電強盗にはタンス預金は埋蔵金(19年3月25日)
370)「アポ電強盗」は「オレオレ詐欺」の兼業なのか(19年3月11日)
369)取締りを強化してもオレオレ詐欺が減らない理由(19年2月25日) 
368)クレジットカードを持てない人はこれだけいる(19年2月4日)
367)早くも再逮捕説が流れている高山若頭(19年1月21日)

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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