溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

398)一部のファンとの紐帯も切れた暴力団のやりっ放し(20年6月29日)

 六代目山口組系秋良連合会の傘下組員・早崎美浩容疑者が去年9月大阪府堺市の交差点で当時9歳の男児を車ではね、肝臓損傷、右足骨折の重傷を与えながら、そのまま逃亡し、このほど大阪府警堺署が逮捕した。

 早崎容疑者は当時、車の免許が失効した状態で、しかも乗っていたのはナンバープレートを付け替えた車だったため逃げたと供述、ひき逃げを認めている。が、そのときシャブをきめていたため、覚醒剤乱用の発覚を恐れて逃げたという噂もある。

 いずれにしろ早崎容疑者はなんの罪もない男兒を事故に巻き込んだ上、責任逃れでひき逃げした。重罪である。

 関西在住の組幹部が言う。

「警察がしばしばイヤキチ(嫌がらせ)で無関係の組員を逮捕するのは事実です。だけど、今回の場合は早崎がひき逃げを認めている。

 であるなら、起訴を待たず、六代目山口組なり、その下の秋良連合会なりが早崎と早崎の所属する組に対し、処分を下して当たり前です。自ら襟を正し、世間様にかけたご迷惑をお詫びする。社会に対し恭順の意を示す。

 分裂前の山口組でも、この程度のことはやっていた。しかし今はやらない。知らんぷりです。なぜやらないか不思議です」

 今、分裂抗争では六代目山口組が神戸山口組より優勢で、押せ押せムードだ。世間体を気にする余裕はたっぷりあるはずだが、それをやらない。これはなぜなのか。

 そういえば5月26日、六代目山口組系益田組傘下玉木組(上田市)若頭・小沢翔(35)は自分の女房を寝取られた恨みで、同県坂城町の寝取った男の親の住まいに乱入、寝取った男の弟妹を射殺し、自分も右こめかみを撃ち抜いて自殺した。

 これほどハタ迷惑な行為はない。弟妹は自分の元女房をめぐるトラブルには何の関係もない。

 玉木組は組員5人ほどの小さな組というが、それでも若頭といえば組のナンバーツーで、次代組長の有力候補である。なんでこんな男が若頭?と呆気に取られるが、小沢がしでかしたこの事件も組の営みとは何の関係もない。

 ところが益田組や六代目山口組が小沢の所属した玉木組に対して、何らかの処分を科したという話は聞こえてこない。せめて弟妹の親御さんに対して深謝するのが筋のはずだが、それもやらず、単に殺しっ放しのようだ。

 ことによると山口組は、どうせ我々は反社の暴力団。何をやっても世間様から爪弾きされるのだから、社会のルールはどうでもいい、約束ごとも蹴っ飛ばす、と考え出したのか。

 とすれば、名実ともに「社会の敵」である。一部のファンとの間に結ばれていた紐帯も切れた。



<斬り込み時評バックナンバー>

397)どこにでも出向く“今どきホステス”はもう止められない(20年6月15日)
396)カタギに女房を取られたヤクザが逆上という時代(20年6月1日)
395)コロナ禍で暴力団のシノギも壊滅(20年5月18日)
394)「暴力詐欺団」という新語も出てきたヤクザの凋落(20年4月27日)
393)二面性を失った日本の暴力団史はほぼ終わった(20年4月13日)
392)売春一般化で女依存型ヤクザも激減(20年3月30日)
391)コロナ禍で増えそうなヤクザの金銭トラブル殺人(20年3月16日)
390)覚醒剤流通網を叩き潰さない警察の不思議(20年3月2日)
389)家族のためにカチコミをやるヒットマンの哀れ(20年2月10日)
388)特定抗争指定以来、それぞれの組でそれぞれの動き(20年1月27日)
387)「特定抗争指定暴力団」で移動中の組長は殺される(20年1月6日)

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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