溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

387)「特定抗争指定暴力団」で移動中の組長は殺される(20年1月6日)

 6代目山口組と神戸山口組を対象とした「特定抗争指定暴力団」への指定はこの7日、官報に公示され、いよいよ適用される。

 暴力団の受け止め方は「案外ぬるい。これなら対応できる」というものから、「車での移動がきつくなりそう。苦勞させられるんじゃないか」まで様々だ。

 6代目系の中堅幹部が言う。

「兵庫県は神戸市、尼崎市、淡路市、姫路市だけが指定される。ということは、明石市で集会をもてば50人が集まってもオーケーだろう。大阪は大阪市と豊中市だけの指定だし、愛知県は名古屋市だけ。指定地を外せば、寄り合いが出来る場所はごまんとある。指定期間は3ヶ月というけど、3ヶ月後、これじゃいかんといって、より強化されるのかね」

 これとは逆に別の中堅幹部は楽観視していない。

「組員5人以上で屯するなというんだから、4人までならいいことになる。親分が車で移動するとする。運転するのは当然組員だ。ガードが親分の両脇に1人ずつ付く。それに親分本人を加えれば、もう4人だ。前の警護車、後ろの警護車は動かせない。

 うちの親分はふだん移動するんだって、車を3〜4台は列ねる。それが抗争の最中に1台だけっていうのは、移動中に襲われて殺されろというのと同じだ。実質的に子分も付けず、家の中で蟄居していろってことになる」

 逆からいえば、敵の移動中が攻撃の狙い目になる。「特定抗争指定」は必ずしも抗争の事前防止だけに働くわけではない、ということだろう。

 しかし問題は神戸山口組の惨状である。中田浩司山健組組長の殺人未遂による逮捕、太田興業・太田守正組長の引退と組の解散が続き、組内は茫然自失のようだ。山健組も同じ状況で、弘道会を撃とうという気力さえないように見受ける。

 ならばすでに勝負はついて、6代目側、つまり高山清司若頭派が勝ったということか。そうではなかろう。彼は強権的に直参を支配して組のために働きを見せろとケツを叩きながら、戦いが終わった後、配るべき報奨を持っていない。ふつう報奨は負けた側の財を没収して、自陣の戦功ある配下に配る。

 ところが負けた側がスカンピンなら没収できないし、配れない。山健組の中田組長はネットカジノの配給元、S社のH社長という太いスポンサーを握っていたが、H社長は中田組長の逮捕を見てとり、早々と山健組、神戸山口組から逃げた。弘道会は同業他社の金ヅルを握っているため、簡単にはH社長を掌握できない。

 誰だってタダ働きはしたくない。しかし、配るべき縄張りや利権、資産はどこにもない。やくざを取巻く環境が激変していることを、高山若頭はしかとは認識していないと見える。



<斬り込み時評バックナンバー>

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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