溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

372)忖度させた安倍首相も麻生大臣も同罪だ(19年4月8日)

 5日、下関北九州道路の国直轄調査について「私が忖度した」と明言した塚田一郎国土交通副大臣がようやく辞任した。

 塚田氏はその後当人が主張するように「事実と反するので発言を撤回した」わけではなく、立場と場所をわきまえず、逆に真相を話したから辞任に至った。

 塚田氏は問題の応援演説でこう語っている。

「かわいい弟分の(自民麻生派の)大家敏志参院議員が「小倉に来て激励してくれ」と。渡世の義理には勝てません。麻生派は渡世の義理だけで生きています」

「これは11年前に凍結されているんです。何とかせにゃならん。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか。安倍晋三総理です。総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっている」

「吉田(博美自民党参院)幹事長が私の顔を見て、「塚田分かってるな、これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。私、すごく物わかりがいいんです。すぐ忖度します。「分かりました」と」

 自民党政治の内実はほとんどヤクザの世界だと改めて思う。ヤクザの世界の方がもっと罰則が厳しく、同じようなケースだと、塚田氏ばかりか安倍総理、麻生副総理の首も飛ぶはずだが。ここで思い浮かぶのは「組長の使用者責任」である。

 95年8月、京都で山口組下部組織の組員が警察官を誤って射殺した。遺族は当時の渡辺芳則組長らに損害賠償を求め、約1・6億円を請求した。二審大阪高裁判決は渡辺組長らに約8千万円を払えと命じたが、山口組は上告し、最高裁は組長の使用者責任を認め、上告を棄却、二審判決が確定した。

 その論理は組長と組員の間には使用者と被用者の関係が成立している。暴力団にとって威信の維持は資金獲得活動に欠かせず、他の暴力団と対立抗争が起きるのは不可避だ。山口組は対立抗争で組員の成した殺傷行為を賞賛し、対立抗争は組長の事業そのものと見ることも可能、とした。

 換言すれば、暴力団は忖度の組織体であり、組長が命令しようと命令しなかろうと関係なく、下がやったことは上の責任だ。よって行為をなした下だけでなく、上も罰せよとなろう。

 つまり上の意向を忖度して道路で利益誘導した塚田だけでなく、忖度を余儀なくさせた安倍も麻生も同罪だ、同じように罰せよ、となろう。これが組長ならぬ「首相の使用者責任」になる。こうした理屈を推奨するつもりはないが、それにしても忖度は自民党とヤクザ界共通の慣習である。



<斬り込み時評バックナンバー>

371)アポ電強盗にはタンス預金は埋蔵金(19年3月25日)
370)「アポ電強盗」は「オレオレ詐欺」の兼業なのか(19年3月11日)
369)取締りを強化してもオレオレ詐欺が減らない理由(19年2月25日) 
368)クレジットカードを持てない人はこれだけいる(19年2月4日)
367)早くも再逮捕説が流れている高山若頭(19年1月21日)

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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