溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

310)前代未聞の珍事続出 京都府警は大誤算(17年7月10日)

 神戸山口組の井上邦雄組長が6月16日、暴力行為法違反と傷害容疑で京都府警に逮捕されたが、どうやら満期で釈放されるらしい。

 今年1月、会津小鉄会の後継をめぐる騒動で、六代目山口組側と神戸山口組側がそれぞれ応援団を買って出て会津小鉄会本部で激突、負傷者が出る騒ぎになった。

 そこで京都府警は、山口組3派を一網打尽にするチャンス到来とばかり警察庁にお伺いを立て、がんばれと送り出されたのだが、事件関係者の対応は思惑外れの連続。

 事情を知る者は前代未聞の珍事続出と呆れ返っている。

 まず会津小鉄会の馬場美次前会長が、クーデターを起こした原田昇元若頭(六代目寄り)が勝手に自分の引退・代替わりの文書を偽造・行使したと被害届けを出した。

 馬場前会長は引退したとはいえ、「ヤクザが警察に被害届けを出すのは恰好が悪い」と渋ったのだが、裏に控える神戸の井上組長が「遠慮は要らん。出せ、出せ」と焚きつけたと伝わる。

 もちろん被害届けは京都府警にとっておいしい話。これをテコに六代目側の逮捕に踏み切った。だが、六代目側は被害届けの裏に神戸側ありと知り、対抗上、騒ぎで負傷した原田側の組員(岡山仁義会)を説得、異例を承知で被害届けを出させた。

 ヤクザが喧嘩して、警察に被害届けかよ、と周りは呆れたが、京都府警にとってはこれまたおいしい。早速、神戸側や任侠団体山口組側の山健組組員などを逮捕に走った。

 京都府警は絵図通りの展開に笑いが止まらなかった。唯一気に入らないのは、指名手配した山健組・中田広志若頭が逃亡を続けて出頭しないこと。

「親分の井上組長がパクられた。にもかかわらず、ナンバー2の若頭が雲隠れとは呆れた」と苛立ったのだ。

 逮捕した組員の多くが黙秘だったが、携帯やスマホの着信、発信記録は押さえている。誰が誰にどう連絡し、どう現地に集合させたか、誰が指示して乱闘になったか、証明は簡単と楽観していたのだ。

 だが、直後にドンデンが起きた。山健組の直参が被害を受けた原田系組員を訪ね、示談交渉した結果、組員が被害届けを取り下げた。

 これで井上組長の起訴はならず保釈に。そればかりか、これまで逮捕した各派21人と、これから逮捕予定だった20人全員を嫌疑不十分含みの処分保留で放さざるを得ないだろう、ともっぱらなのだ。

 被害届けを取り下げた当の組員は、井上組長本人が頭を下げに来たと錯覚した、まんまと騙された、とボヤいたそうだが、警察庁の目の前でメンツをつぶされた京都府警は怒り心頭である。

 必ずや山口組3派ばかりか、会津小鉄会2派をも血祭りに上げると、次の捕り物に動き始めたようだ。



309)本職も逃げ出す安倍政権のマフィアぶり(17年7月3日)
308)アベ友の準強姦罪を葬った組織犯罪対策部長が共謀罪所管(17年6月26日)
307)山口組3派を摘発 もはや抗争の継続どころではなくなった(17年6月19日)
306)井上組長逮捕で山健組は存続の危機(17年6月12日)
305)在日3世の織田代表が真摯に語った日本への思い(17年6月5日)
304)金密輸がらみ事件が多発している背景(17年5月29日)
303)織田代表が語るヤクザ業界改革の言やよし(17年5月23日)
302)任侠団体山口組の独立は「コップの中の内輪もめ」ではない(17年5月15日)
301)神戸山口組分裂、織田代表に真意と展望を聞いた 侠道精神を取り戻す(17年5月8日)
300)半グレ集団の賢くも仁義なき金儲けビジネス、巨万の富を蓄積(17年5月1日)
299)福岡現金3・8億円強奪の背景を読む(17年4月24日)
298)米国は儲かる北朝鮮を潰さない(17年4月17日)
297)老齢化が進む暴力団のミジメな今後(17年4月10日)
296)ならず者の最後の避難所愛国心の大ボスは誰か(17年4月3日)
295)共謀罪、血祭りに上げられるのはテロリストより暴力団(17年3月27日)
294)北朝鮮を国連から除名することは有効なのか(17年3月13日)
293)森友疑惑について合理的に考察する(17年3月6日)
292)カネが飛び交う医者と暴力団の関係(17年2月27日)
291)米国は先制攻撃よりも中国を利用するだろう(17年2月20日)
290)分裂した会津小鉄会、2つの組織にこれだけの差(17年2月13日)
289)へたれの安倍首相は暴力団よりも劣る(17年2月6日)
288)原発世迷い言の暗愚の宰相(17年1月30日)
287)勝負あった会津小鉄会トップ人事への介入騒動(17年1月23日)
286)司組長の誕生日を前に元山健組の大幹部が飛び出した(17年1月16日)

<斬り込み時評バックナンバー>

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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