溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

422)暴力団も不思議がる検察の弘道会への対応(21年7月19日)

 一昨年の3月、横浜のラーメン店で稲川会系の組長と幹部4人が六代目山口組系小西一家幹部(36)の胸や首などを刺し、殺害したとして、今年6月、神奈川県警は出頭してきた稲川会の5人を逮捕した。組長は「自分が刺した」と供述したが、7月15日、横浜地検はなぜか理由を明かさないまま、全員を不起訴処分にした。

 このニュースに接して「なぜ不起訴?」と小首を傾げる向きは多いだろう。暴力団関係者も次のような見立てが出るほど不思議がる。

 中立系団体の幹部が言う。

「まるで根拠などない話と思いますが、我々の間では検察の首脳が六代目山口組の高山若頭に金玉を握られたという噂が飛び交ってます。億というカネを握らせたか、下半身スキャンダルを掴んだか。

 横浜のラーメン屋の話は被害者が六代目山口組側で、加害者でないので逆ですが、最近、滅多やたら六代目山口組、なかでも弘道会側が不起訴になるケースが多い。あるいは単独犯として処理され、共犯者がパクられない。

 高山若頭の出所後、ひどくなった傾向らしく、検察も今春これに気づき、新人事でいくぶん手直ししたとか。今回の稲川会側不起訴はそのせいかもしれない。検察の罪滅ぼしだ」

 あらぬ噂を立てられ、検察、警察としては迷惑な話だろうが、とはいえ得心のいかない事件処理が多すぎる気がする。

 分裂直後、岡山の池田組・高木忠若頭が弘道会系組員・山本英之に射殺された事件でも、当初から共犯の可能性が指摘されながら、結局共犯者を特定せず、単独犯として起訴している。

 19年4月、山健組・與若頭が神戸の春日野道商店街で刺された事件では弘道会系野内組系組員2人が逮捕されたが、1人は起訴されたものの、もう1人は共謀を否認、長らく処理が宙に浮いていた。

 19年10月、山健組事務所横で弘道会系稲葉地一家の丸山俊夫幹部がフリーの記者と偽り山健組系組員2人を射殺した。拳銃やカメラなど道具立てに巨費を掛け、丸山に用意できるわけがないとされながら、検察は丸山の単独犯として事件処理している。

 今年6月には名古屋錦三のセクシーキャバクラ店から2月分のみかじめ料として26万円を受け取った容疑で弘道会統括委員長で稲葉地一家・松山猛善総長らが逮捕された。松山総長は黙秘を通したとされるが、それでも不起訴というから、これはおいしい話だろう。

 検察が弘道会側を有利に扱う条件は「手配を出したら即、最寄りの署に出頭すること」があるだけという(前出、中立系幹部)。

 たしかに弘道会系の実行犯は逮捕状が出たり、指名手配がかかると逃げ回らず、おとなしく署に自首するケースが多いようだ。



<斬り込み時評バックナンバー>

421)山健組西川若頭がコロナで死亡し飛び交う謀略情報(21年7月5日)
420)コロナ禍で求められる「デカメロン」的生活(21年6月21日)
419)オレオレ詐欺で賠償を迫られる司組長の自業自得(21年6月7日)
418)暴力団衰退の要因をのばなしにしてきた高山若頭(21年5月10日)
417)山口組の抗争とは別に新陣取り合戦が始まる(21年4月19日)
416)警察が色めき立った関西カチコミ事件のチンケ(21年4月5日)
415)六代目山口組高山若頭の「特定抗争」を仕掛ける辣腕(21年
414)弘道会系組長父子が襲撃された背景に何があるのか(21年3月8日)
413)山口組は弱体化したが弘道会は強化された警察の誤算(21年2月22日)
412)シノギが振るわない半グレで静かに進む地殻変動(21年2月8日)
411)親分子分という擬制血縁関係=ビジネスモデルの崩壊(2021年1月25日)
410)六代目山口組・高山若頭が説く「まじめなヤクザ道」(21年1月4日)

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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