溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

377)反社にも暴力団同様の判断をした吉本の新対応(19年7月1日)

 吉本興業の芸人が特殊詐欺を行う半グレの誕生祝いでトークや漫才を披露、それも会社を通さない闇営業だったというので、同社は24日、謹慎などの処分を下した。

 処分芸人13人の出演番組を今後どう扱うか、テレビを中心にメディアは大慌てのようだが、吉本興業の処分は当然の対応だったろう。

 あまり指摘されていない点だが、吉本の今回の処分には新対応が含まれている。従来、芸人が関係を結んでならない相手は暴力団の幹部や組員だけだったが、今回、吉本はそれを、特殊詐欺を行う反社会的勢力にまで拡大したことである。

 吉本は処分理由について「特殊詐欺グループとされる反社会的勢力主催の会合へ参加していたとするもの」としている。

 反社会的勢力とは何を指すのか。ふつう「反社」と略される総称だが、警察白書によれば、「暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団等、暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」としている。

 反社の中には当然、特殊詐欺を行う半グレも含まれる。よって吉本は反社との関係を問題として、半グレとの関係を断とうとしたといえる。

 これまで警察は半グレによる特殊詐欺を摘発する理由として「彼らが上げた収益が部分的に暴力団に上納されている可能性がある」などとして、暴力団に関係するから摘発すると、持って回った言い方をした。

 たしかに暴力団対策法も都道府県の暴力団廃除条例も各業界の暴力団排除要項もすべて問題とするのは暴力団であって、半グレなどの反社は適用外だった。

 吉本は芸人たちが行っていた闇営業を、会社として黙視できない立場ではあったが、今回、暴力団との関係如何を問わず、反社に営業しない、反社と利害関係を持たない、と事実上、宣言したに等しい。

 考えてみれば、半グレを主体にする振り込め詐欺などの特殊詐欺グループは年間350億円前後、最盛期には500億円ものカネを高齢者中心に詐取してきた。彼らが国民に直接与える損害は暴力団が与える損害より大きいかもしれない。

 一部の暴力団が特殊詐欺に参入し始めたとはいえ、特殊詐欺は暴力団に上納金を渡す可能性があるから悪事なのではない。特殊詐欺そのものが悪であり、犯罪なのだ。だとすれば、お笑い芸人がもみ手をして詐欺グループや半グレグループに近づき、宴会やパーティーで闇の出演料をもらうことは許されない。斬って捨てられて当然だろう。



<斬り込み時評バックナンバー>

376)特殊詐欺を善行と考える若者たち(19年6月17日)
375)特殊詐欺の半グレを組員にしない抜け穴(19年6月3日)
374)米国の華為潰し、日本も同じ目に遭っている(19年5月20日)
373)任侠山口組で織田代表と親子盃、舎弟盃(19年4月22日)
372)忖度させた安倍首相も麻生大臣も同罪だ(19年4月8日)
371)アポ電強盗にはタンス預金は埋蔵金(19年3月25日)
370)「アポ電強盗」は「オレオレ詐欺」の兼業なのか(19年3月11日)
369)取締りを強化してもオレオレ詐欺が減らない理由(19年2月25日) 
368)クレジットカードを持てない人はこれだけいる(19年2月4日)
367)早くも再逮捕説が流れている高山若頭(19年1月21日)

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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