溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

391)コロナ禍で増えそうなヤクザの金銭トラブル殺人(20年3月16日)

 神戸山口組系山健組傘下「2代目武神会」の幹部(41)以下、建設業やとび職、型枠大工など7人が加古川市の農道で他人の乗用車を全焼させた疑いで3月5〜7日、兵庫県警により逮捕された。

 県警は11日、車の持ち主の遺体を埋めたという関係者の供述に基づき、京都府福知山市の山中を捜索し、車の持ち主の遺体を発見した。県警が車の持ち主の男性宅を捜索したところ、武神会の幹部との金銭トラブルを示唆するメモを発見、メモには「何かあったら、もめたと思って下さい」などと書かれていたという。

 事件の全容はまだ解明されていないが、おそらく殺された男が武神会幹部にカネを貸し、強く返済を迫ったところ、幹部がカネを返さず、すったもんだの挙げ句、かえって借り手の幹部が貸主を殺したと想像できる。

 証拠隠滅のため遺体は山中に埋め、貸主の車もナンバープレートを外した上、全焼させたのだろう。

 ヤクザにカネを貸す金融機関は存在しないから、どうしてもヤクザは小金を持つ知り合いからカネを借りることになる。だが、ヤクザはほとんどの場合、カネを借りても、返済期限までに返さないし、返せない。そうでなくてもシノギがないから、返すメドが立たない。「ない袖は触れない」は絶対の強みなのだ。

 たいてい貸主がこの時点で、「貸した俺がバカだった。いい勉強になった。これからは2度とヤクザに貸さない」と諦める。が、諦めずに督促を繰り返すと、この事件に見るように逆ネジを喰って、自分の命さえ失う。

 昔からヤクザに高利貸しは多かった。彼らは賭博の負け客にカネを融通するなど、金銭の貸し借りはつきものだから、小金を溜め込んだ上、金貸しやマチ金になるヤクザは珍しくなかった。

 そういうヤクザの鉄則は、自分より強いヤクザには絶対カネを貸さない、というものである。自分の所属する組が弱体と見られたら、借り手のヤクザはまず借りたカネを返さない。力で来い、返してもらいたいなら、俺からカネをもぎ取れ、という態度をとる。

 ヤクザでさえこうなのだから、カタギの人間がヤクザにカネを貸すなど論外である。力で比べれば、貸借関係より暴力的な命の取りっこの方が強いのだ。

 もちろん警察に駆け込んでも、弁護士を立てても、裁判に訴えても、たいてい借り手有利の、こうした基本関係は変わらない。

 日本経済は新型コロナウイルスもあり、今や底なし沼の深みに一直線である。ヤクザ経済も同じこと。展望ゼロ、右も左も真っ暗闇。ヤクザの絶望的な沈下は同じようなやけっぱち犯罪を続発させるにちがいない。



<斬り込み時評バックナンバー>

390)覚醒剤流通網を叩き潰さない警察の不思議(20年3月2日)
389)家族のためにカチコミをやるヒットマンの哀れ(20年2月10日)
388)特定抗争指定以来、それぞれの組でそれぞれの動き(20年1月27日)
387)「特定抗争指定暴力団」で移動中の組長は殺される(20年1月6日)

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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